パーパス経営・探究メモ

このページでは、パーパス経営について探究している中で得た気づき、よく聞かれる質問などを「備忘録的なメモ」として残していきます。きれいに整えられた情報ではありませんのでご理解ください。

ミッションではダメなのか?


結論からお伝えすると、まったくダメではありません。ただ「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)」の3本立ては「経営理念の浸透」の観点から考える難易度が上がります

 

まず「MVVの3つも社員に覚えさせるのは難しい」ということ。特にバリューは複数個あるケースがほとんどなので、すべて覚えさせるのはとても難しいです。

 

つぎに「ミッション(存在意義)とビジョン(理想の姿・将来像)の違いを社員に理解させるのが難しい」ということ。ミッションとビジョンという言葉の定義を理解することが難しいだけでなく、多くの会社で「ミッションとビジョンが入れ替え可能=似たような言葉」になっているケースが多く、さらに違いを理解させる難易度が上がります。

経営理念は覚えて・体現して初めて意味がある。なので私は「パーパス&コアバリュー」という2つで経営理念を表現することをオススメしています。もし「どうしてもミッションという言葉を使いたい」という方がいれば「ミッション&バリュー」の2つで表現すると、浸透させやすくなると思います。

パーパスは誰が(誰と)作るべきか?


パーパスを作る際は大きくわけると「経営者がメインで作るケース」と「社員も含めたみんなで作るケース」の2つがあります。どちらが良い悪いは正直ありませんが「経営者の強い意志が入っていること」は絶対に欠かせません。

 

・経営者がメインで作ったけど、流行りにのって作っただけで意志が入っていない。これは論外ですね。

・社員も含めてみんなで作ったけど、社員の声を重視したあまり、経営者自身が強く意識できる内容になっていない。自分の言葉で語れない。これもダメですが、意外と多いので要注意。

 

経営者は経営理念(パーパス)をもとに、経営戦略を描く。しかし、経営者が自社の経営理念(パーパス)に強い意志が入っていないのではお話になりません。

なお
「社員も含めたみんなで作るケース」ですが、「社員の経営的な視点が乏しい」と議論がとても浅くなりがち。経営者の満足いくパーパスに昇華させることは非常に難しいです。

ちなみに私がオススメするのは「経営者が主導で作ったパーパス案を社員(特にマネージャー陣は必須)に見てもらい、意見をもらって改善する」ことです。また、パーパスを体現するための核となる価値観=コアバリューの案出しについては社員からアイデアを募集するのも良いです。最終的にまとめるのは経営者ですが、そこに社員が関与することで「浸透しやすくなる」のです。

 

タイトルの問い「パーパスは誰が(誰と)作るべきか?」に戻ると、私の答えは「経営者がメインで作るべき(そのプロセスの一部で社員にも入っていただく)」が現時点でのベストだと考えています。

【難しいケース】経営トップが「雇われ・親会社からの出向」の場合。大抵は3~5年で親会社に戻ることが決まっているので、自分の意志を込めたパーパスを作ろうとはなかなか思いません。その場合は生え抜きの役員が主導して「経営メンバーが一体となって作る(一部で社員も入る)」がオススメ。意志のある経営メンバーで、確固たるパーパスを策定しましょう。

パーパスはいつ改定すべきか?


以下、ほぼSNSに投稿したままの文章です。
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パーパスを改定しました。

 

:思考と組織をアップデートすることで、イキイキと働ける会社・社会をつくる

:サステナブルな人と組織をこの地球へ

 

以下、パーパス改定の思考履歴。

旧パーパスの課題は2つ。1つ目は現状に寄り過ぎていたこと。2つ目は話すのに時間が掛かる=長いこと。そこで、もっと遠い未来を考え「天平株式会社が体現する、し続ける社会における存在意義=パーパスは何か?」を考えました。

 

その思考過程のなかで「思考力の開発はもちろん大切だし、良く生きるために欠かせない。でも、それだけではサステナブル(持続可能)とは言い難い」という気づきがありました。

 

実は2023年の前半は人生で最もメンタルが低迷している時期でした。この時期を振り返ると「あきらかに持続不可能な状態」だったと思います。(壊れかけのRadioならぬ壊れかけの俺状態w)

 

自分だけでなく、周りでメンタルを崩す人も多く見ていくなかで「サステナブルな人」というキーワードが下りてきました。「事業内容だけでなく、それを動かす人がサステナブルじゃないとダメだ。社会に価値提供し続けるためにも」といった具合に。

 

時を同じくして「奇跡の地球(ほし)」という大好きな歌が頭のなかに流れてきました。壊れゆく地球をどうにかしたい!その想いにシンクロ。

 

そして誕生したのが「サステナブルな人と組織をこの地球へ」です。※地球は「ほし」と読みます。

 

ちなみにパーパスの策定を仕事にしていると、クライアントから「パーパスはいつ改定すべきか?」という質問を頂きます。

 

今回わかったことは、やはり「〇年おき」といった期間ではない。「強烈な原体験が加わったタイミング」だということです。それは私のように個人的なコトもあれば、組織や社会の変化によるモノやコトもあるでしょう。

 

ということで、今回は旧パーパスを作ってから1年半ほどで改定することになりました。この経験が誰かの参考になれば幸いです。
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パーパスはいつ改定すべきか?その答えは、既存のパーパスではカバーできないほどの組織を揺るがす
「強烈な原体験が加わったタイミング」ではないでしょうか。

パーパスで飯が食えるか?


パーパス経営に否定的な意見として「パーパスで飯が食えるか?」という疑問があります。結論からお伝えすると「パーパスで飯は食えない」です。当たり前といえば当たり前ですが、素晴らしいパーパスを掲げても、それを体現した企画を考える人、売る人、組織をつくる人などがいないと食えません。

 

飯が食えないのに、なぜパーパスを掲げ、体現しようとする企業があるのか?それは「どうせ稼ぐなら、できるだけ善い方法(社会的に価値のある方法)で稼ぎたい」という価値観を持った人たちがいるからです。また、その数は無視できるほど少ないわけではなく、能力も低くありません。それどころか、このような価値観を持った人たちは志が高く、積極的に行動します。どの企業も中長期的に生き残るためには、積極的に行動できる人の存在が欠かせません。

 

これは私の体感ですが、あらゆるものが手に入る時代に生まれた世代(20代~30代)は「カネやモノ」への欲求より「コト」への欲求が強いように感じています。「それってなんのためにやるんですか?」このセリフが象徴するように、「コト」の「意味・意義」に価値を見出します。

 

一方で40代以上の世代では「どうせ稼ぐなら、できるだけ善い方法(社会的に価値のある方法)で稼ぎたい」は稀だったかもしれません。しかし、時代は変わった。

 

さらに大きな問題が迫っています。1990年の新成人は188万人いました。それが2020年には122万人に。そして2040年には77万人になる予測が出ています。また、リモートワークが普及し、翻訳システムも飛躍的に発達した未来では、就業先を選ぶ際に「国境」という壁がなくなります。そんな状況で「価値もない、給与も高くない」仕事に人が集まるでしょうか?日本企業には「仕事はあるのに人がいない、事業が回せない」という危機が迫っています。

 

最初の疑問に戻ります。「パーパスで飯が食えるか?」この疑問に対する答えは「パーパスもないと食えなくなる」なのかもしれません。