パーパスじゃ社員は動かない

パーパスで「社員をモチベートできる」という夢は、いまこの瞬間に捨ててください。一時的に「わ~楽しそう!やりましょう!」と乗ってきてくれる社員はいます(ごく少数)。しかし、目の前の業務に忙殺され、その気持ちは持続しません。そして、いつの間にか「掲げているけど誰も見ない」これまでの経営理念と同じことになります。

Z世代は就活で「パーパスを重視する」と言われています。これは嘘ではないでしょう。しかし、実際に就職すると「目の前の業務を覚えること」や「上司から求められる成果」に焦点がいき、パーパスについては忘れ去られます。たしかに「採用時の魅力」としてパーパスは機能しますが、入社してしまえばそれ以上なにも起きません。無風です。

では、何のためにパーパスを作るのか?

経営者自身のためです。経営者自身が迷わなくなるために、一貫性を持つために、パーパスを作ります。

パーパスは経営理念の最上段に掲げるものですが、この経営理念を意識するのは誰か?最も意識しなければならないのは経営者です。もちろん現場のメンバーにも意識して頂くものですが、現場での仕事に「経営理念を意識しないとできないこと」は多くありません。

一方で経営者はどうでしょうか?日々、会社の将来を左右する判断をしています。この事業を続けるのか?続けるなら今の方向でいいのか?誰をリーダーにするか?そもそも我々はどこを目指しているのか?...この時に参照すべきものが経営理念であり、最上段に掲げているパーパスです。

このページでも解説していますが、パーパスは「社会における存在意義」です。儲かればいい!このサービスを売りたい!上場したい!という自己中心的なものではなく「社会の持続可能性を高めるために、どのような存在意義を果たすのか?」を言語化したものになります。

パーパスは上記の考えに共感した経営者が「社会における存在意義( ≒ 自社の進むべき方向)」を定め「迷わず、一貫した経営判断を積み重ねていくための旗印」になります。したがって、すべての経営者にフィットするものではありません。

経営者はパーパスをもとに、社員から信頼(TRUST)されなければなりません。具体的には経営者自らがパーパスを体現する努力(EFFORT)を積み重ね、成果(ACHIEVEMENT)を出すことです。小さな成果でも構いませんが、それがあってはじめて社員は「うちの会社も社会に貢献できるんだ」「このパーパスを信じて目指していけばいいんだ」と思うことができます。これが「私もやろう」という動機(MOTIVATION)につながります。

パーパスで「社員をモチベートできる」は、経営者の「信頼=努力 × 成果」でのみ叶えることができます。

パーパスは「社員みんなで作ろう!」そうすれば「社員をモチベートできる」という話もよく聞きます。でも実際に一時的にモチベートできても、長続きしている会社を見たことはありません。事業を変革できた会社も見たことがありません。

パーパスに基づいた事業変革。これを主導できるのは経営者しかいません。その経営者が「みんなの意見を盛り込んだパーパス」でどこまで本気になれるでしょうか?経営者自身が本当に実現したい未来を描けていれば問題ないでしょう。しかし「みんなで作る(前提にみんなをモチベートする)」のであれば、どうしても「みんなの意見」を盛り込むことになります。その結果、「経営者自身の意志」は薄まります。

社員の意見は聞いた方がいい。でも、何よりも大切にすべきは経営者自身の意志であり、本気でこの会社を変える覚悟と力のある人間がパーパスを策定すべきです。でないと、会社は変わらないですし、パーパスをもとに変革した事業で「社会課題を解決する」こともできません。

この地球の運命は、わたしたち経営者次第です。 パーパス経営で、この地球を持続可能にしていきましょう。