ダイバーシティ&インクルージョン。この言葉をみなさんはどのように定義していますか?所説ありますが、組織論のなかで最も納得できたものは以下の定義です。
●ダイバーシティ(多様性)
それぞれの違いを尊重し、個々で成果を出している組織。「みんな違って、みんな良い」
●インクルージョン(包摂性)
それぞれの違い掛け合わせ、チームで成果を出している組織。「みんなの違いを掛け合わせて、新しい価値をつくろう」
これは素晴らしい定義であり、ダイバーシティ&インクルージョンを実現できている組織は理想的です。しかし、残念ながら日本にはそのような組織は少ないのが現状。ダイバーシティを謳っている企業でも「私とあなたは考えが違う。だからできるだけ関わらないようにしよう」という解釈が行きわたっている。これは多様性という言葉による「分断」が進んでいる状態です。
ダイバーシティ&インクルージョンが浸透しない原因
①同調圧力の強さ
日本では「同調圧力」が強く、まだまだ多くの組織で「和を乱さない」ことが評価される。
②正しい定義の浸透不足
「みんな違って、みんな良い」の前半分「みんな違って」だけが浸透している。
③軸の不在
「共通の軸(目的)」がないと、わざわざダイバーシティ&インクルージョンを体現しようとはしません。なぜなら、違いを尊重し、違いを掛け合わせるには「非常に強い思考負荷」が掛かるからです。何のためにダイバーシティ&インクルージョンを体現するのか?「共有の軸(目的)」がないことが、①②を突破できない原因とも言えます。
④スキルの不足
①②③を満たしても、相互理解、対話、議論のスキルが不足している組織も多い。
パーパスをもとに、ダイバーシティ&インクルージョンを体現する
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「地球上のすべての人と組織がより多くのことを成し遂げられるようにすることが私たちの使命、と言うからには、それはたんなる言葉では済まされません。我々の下す決断、我々のつくる製品、顧客に映る我々の姿、そうしたことすべてに宿る我々の本質の一つひとつが、その使命を反映していなければならないのです」とマイクロソフトのCEOサティア・ナデラはCNETで語っていたそうです。https://dhbr.diamond.jp/articles/-/9820
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「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」はマイクロソフトがMission(パーパスと置き換えてもいいでしょう)として掲げている言葉です。この言葉を語るからには、すべての判断にこれを反映しなければならない。マイクロソフトはこの軸(目的)=パーパスがあるから、ダイバーシティ&インクルージョンの体現に本気なのです。
(実は最初に述べた「ダイバーシティ&インクルージョンの定義」は私がマイクロソフトの社員から聞いたものでした。現場の社員が自社のダイバーシティ&インクルージョンの定義を社外に「説得力を持って伝えられる」なんて、本当に素晴らしいですね)
ダイバーシティ&インクルージョンの推進はあらゆる企業の経営課題となる
これまでの日本は「日本語」という言語の壁に守られてきました。市場規模や国際競争力の大きさから、単一の国、人種、言語、習慣、価値観でも、経済発展を成し遂げてこれました。しかし、人口減少、少子高齢化、国際競争力の低下から、このままでは経済的にも精神的にも貧しくなる一方。また、テクノロジーの進化によって言語の壁(自動翻訳)や地理的制限(リモートなら世界中どこでも、どこの企業でも働ける)も破壊され、まさに「ボーダーレス」の世界に晒されています。
ダイバーシティ&インクルージョンは、これからの世界で生き抜くための「必須科目」と言っても過言ではありません。違いを持った人を尊重し、違いを掛け合わせて新しい価値をつくる。この難題にチャレンジする軸(目的)となるパーパスが、これからの企業経営には欠かせないものです。