このページでは様々な企業のパーパスを分析! これからパーパスを作る企業は、以下に取り上げるパーパスの本文・補足文・バリューなど、ぜひ参考にしてみてください。
◆ 秀逸すぎる「パーパスとその補足文」を刮目せよ! (株式会社サイバーエージェント)
2021年10月5日に発表されたサイバーエージェントのパーパス。「新しい力とインターネットで日本の閉鎖感を打破する」は社長の藤田さんが常に言っている言葉で構成されていると聞きました。また、サイバーエージェントが社会から求められていることとも重なり、最高のパーパスだと思います。(特に、社長が口に出しやすいことが、パーパス浸透には有効)
ただ、このパーパスだけでは「具体的には?」という部分がイメージできません。そこで、その下にある補足文が素晴らしい!経営陣も、現場の社員も、この補足文があることで「何をやるか、やらないか」判断に迷いません。
これは勝手な想像ですが、2022年FIFAワールドカップ・カタール大会の放映権問題を解決させたのは、このパーパスと補足文があったからだと思います(本当にそうなら、パーパス浸透に絶大な効果を発揮したことでしょう)。日本の閉鎖感を生みだしている既得権益化されたメディア。そのメディアは放映権350億を準備ができなかった。そこに200億という巨額の投資を決めたサイバーエージェントは「新しいメディア」として社会に希望を与えることになりました。
パーパスは掲げているだけでは意味がありません。パーパスを掲げ、経営陣が率先して体現していくことが、社内への浸透と、会社全体としてのパーパス体現につながっていきます。
◆ パーパスとバリューがシンプルでわかりやすい (ソニーグループ株式会社)
ソニーのパーパスを語るうえで重要なのは、以前のミッション・ビジョンです。
・ミッション:「ユーザーの皆様に感動をもたらし、人々の好奇心を刺激する会社でありつづけること」
・ビジョン:テクノロジー・コンテンツ・サービスへの飽くなき挑戦で、ソニーだからできる、新たな『感動』の開拓者となる」
みなさんがもしソニーの経営陣だったら、ソニーの社員だったら、このミッション・ビジョンを覚えられますか?日々、会議のなかで語りますか?内省しますか?きっと難しいはずです。みんなが覚えやすい、使いやすいように、パーパスに一本化したこと、そして短くまとめたことで、経営理念は浸透しやすくなったはずです。
では、このパーパスを体現するためには何が大切なのか?大切にすべき価値観をバリューとして4つにまとめている点が素晴らしいです。
経営陣から現場の社員まで、このバリューを徹底することで、パーパスの体現につながる。このシンプルで強力な構造は、多くの企業が参考にすべきではないでしょうか。
◆ 歴史の延長線上に未来を感じるパーパス (味の素株式会社)
昆布だしの中からアミノ酸の一つであるグルタミン酸の抽出に成功し、1909年にうま味調味料「味の素®」の発売ではじまった会社である味の素。アミノ酸を科学することは味の素のアイデンティティであり、数ある食品会社のなかで「独自の社会における存在意義(パーパス)」を発揮するために欠かせない要素。この要素を「アミノサイエンス®」という言葉でパーパスに盛り込んでいるところが素晴らしい!
パーパスが浸透していくことで、アミノ酸の研究開発に直接関わっていない(例えば冷凍食品の)担当者が「もっとアミノ酸やWell-Beingについて考えて商品開発をしよう」と行動していくイメージができます。これによってパーパスを体現していくことになりますね。
なお、気になることは、理念体系が「コーポレートスローガン、志(パーパス)、ASV、AGW」と4つもあることです。「複雑に見える → 覚えられない」という問題が起きているかもしれません。さらに、4つの定義も独特で理解しにくいかも...。外野から勝手に失礼しますが、ソニーさんのようにシンプルに「パーパスとバリュー」の2つにしてはいかがでしょうか?
◆ ・・・富士通らしさはどこへ?? (富士通株式会社)
このパーパスを見たとき最初に頭に浮かんだことは「富士通らしさは?これって日立でもNECでも、なんならどの会社でも使えるなぁ...」です。当たり前のことすぎて、これをもとに「何をやるか、やらないか」の判断はできない。社員もこのパーパスを見て「よっしゃ!やるぞ!」という気持ちにはならないはず。これではパーパスを立てた意味がありません。
友人に富士通の社員が何人もいるので「パーパスって覚えてる?」と聞くと全員「NO」でした。あぁ...でも希望はある!パーパスは覚えていないけど、全員から「Fujitsu uvanceならみんな意識してるよ」と聞きました。これはすごい!
社員が1つになって「社会課題に挑むソリューションを提供していこう!」というムーブメントが起きているとしたら、素晴らしいことですね。
これは具体的に「この技術と知識を掛け合わせて社会課題を解決する」という方針が示されているからかもしれません。
◆ パーパスではないけど、パーパス経営ど真ん中! (トレンドマイクロ株式会社)
トレンドマイクロはパーパスという言葉を使っていません。しかし、実際には「デジタルインフォメーションを安全に交換できる世界の実現」というパーパスと言っても問題ない経営理念を定義し、長年この社会に対して独自の価値を提供し続けています。
ちなみに、社員の方がこのVisonを連呼するので、取引先である私も自然にこの言葉を覚え、使うようになりました。そして、トレンドマイクロへのご提案(例えば社員研修の企画)に「Visonを少しでも体現した企画にしよう」と工夫をするのです。
パーパスが社員だけでなく取引先にまで浸透している、素晴らしい企業だと言えます。社会課題の解決というのは、1社だけで出来ることではありません。社外にまで浸透をさせていくことは、ぜひ意識していきたいものです。
◆ 超上級のパーパス経営企業!? (伊那食品工業株式会社)
長野県伊那市にある「かんてん」を製造販売している伊那食品工業をご存じですか?世界のトヨタが「師」と仰ぐその会社の秘密は、この社是にあります。
「いい会社をつくりましょう」これは、もはや何も言っていないような抽象的な理念です。しかし「いい会社とは何なのか?」長年積み重ねてきた経営哲学が凝縮されている、素晴らしい理念です。
HPの中で、「いい会社」は自分たちを含め、すべての人々をハッピーにします。という解説があり、パーパス経営の大元にある「株主至上主義をやめて、すべてのステークホルダーに価値を」という考え方とも通じます。
私は独自性のない抽象的なパーパスはオススメしていません。それをもとに判断できないからです。しかし、伊那食品工業のように長い年月をかけて「抽象的な理念に独自の価値を意味づけていく」ことも素晴らしい経営だと思います。年輪のように毎年少しずつ積み重ねていく。そんな経営を志す方は、伊那食品工業から学んでいくことも良いかもしれません。