社員が求めているのは待遇か? やりがいか?

やりがい搾取で大失敗!?

最近よく聞くのが「社員はやりがいを求めている。だからパーパスを作ろう」という話。この方向でパーパスを作り、大失敗している会社の共通点は「待遇が悪い」こと。待遇とは、給与だけでなくオフィス環境や福利厚生まで含めたもの。ここが欠けていると「やりがいはあるけど、こんな待遇じゃ続けられない」となる。一時的に社員のモチベーションを上げることは可能だが、長続きしない。

一方で、待遇はすごく良いけど「やりがいがない」から離職者が絶えないケースもある。「なんのために身を粉にして働いているのか?たった1度しかない人生で、1日8時間もムダに浪費するのはもったいない。他社にもあるサービス、製品、、、うちが潰れたら一時的に困る人はいるかもしれない。でもすぐに他社がカバーする。結局、うちの会社って存在価値がないんじゃないか?」という声も聞く。

社員は「待遇か?やりがいか?」ではなく「待遇も、やりがいも」求めている。

 待遇が先?やりがいは後?

あなたの会社は、待遇は良いですか? やりがいはありますか? どちらか満たしていれば、もう片方を満たすだけ。でもそんな会社は少数。おそらく大多数の会社はどちらも欠けている。ではどちらも満たすためには、どうすればいいのか?

ここでよく聞く話が「待遇が先」で「やりがいは後」。実際にこの形で成功した経営者談なのだが、ここは注意が必要です。「待遇が先」を実現した会社は、圧倒的な営業力や、とてつもなく優れた競合優位性を持っている。だから事業で成果を出すことができ、「待遇」を改善でき、さらに余裕が生まれてから「やりがい」を社員に与えることができる。

ではこれをマネできるか? 圧倒的な営業力や、とてつもなく優れた競合優位性を持っていたら悩んでいないでしょう。大多数の会社はそれがなくて悩んでいるのです。

 どちらも一緒に進めよう

ここで理想的な順番を紹介する。最初に定義すべきことはパーパス(社会における存在意義)。パーパスとして独自性の高い存在意義を定義した上で、次にそれを体現した事業(これは競合優位性が高く、やりがいもある)と組織(このなかで待遇も改善していく)を考える。パーパスをもとにした「競合優位性が高く、やりがいのある事業」を育てながら、その成長と共に「少しずつ待遇も改善していこう」という流れだ。

ちなみにこの流れは5年・10年と中長期の計画になる。この中長期の計画と、少しずつ計画が進んでいる状況が、社員に希望をあたえ、モチベーションを上げ、行動量を上げ、成果を出す。さらには離職者を減らし、組織に優秀な人を蓄積していく。

という状態を目指していくわけだが、実際は3歩進んで2歩下がる、といった険しい道のり。良いことばかりではない。時に急激な後退すらありえる。それでも心折れずに、パーパスをもとにした中長期の計画を1歩ずつ進めていく。これしかない。

社員が求めているのは、待遇も、やりがいも。

 やりがいのある事業を一体となって目指し、成果を出し、少しずつ待遇を改善していく。イチロー選手の言葉を借りれば「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただ1つの道」です。待遇とやりがいが満たされた、笑顔あふれる組織をつくっていきましょう!