パーパスを強烈に浸透させる秘訣

パーパス浸透マップ (株式会社トレンド・プロと共同開発)

■ パーパス・ウォッシュに陥らないために

「うちの会社はいちはやくパーパスを立てたけど、結局何も変わらない。今回も口だけ。経営層を信用できない」という声を何度も聞きました。これは【パーパスと実際の事業活動が乖離している状態=パーパス・ウォッシュ】です。この状態にあると、パーパスの浸透どころか、社員の心は離れるばかり。ではどうすればパーパス・ウォッシュを避けることができるのか?パーパス浸透マップをもとに解説します。

● Attention (注意)

まず最初に「社員からの注意を引く」ことが必要です。そのために経営陣は戦略・事業を「パーパスに基づいて徹底的に変えていく」。さらに「進捗を共有する」ことが欠かせません。「少しずつでも進んでいる」ことがわかると、社員は「会社はパーパスに本気だ!」と認識します。

ただ、経営陣だけが動いていても成果は出ません。社員の注意を引くための取組みを「社員主導」で進めていくことも重要。グッズやポスターの作成など、簡単なものからどんどん任せていきましょう。

また、経営者自身が「目先の売上よりパーパス体現を優先する」「なぜこのパーパスに至ったのか?経緯を物語で語る」「生々しく発信し続ける」ことも欠かせません。とにかく最初はあの手この手で「注意を引く」ことを意識していきましょう。

● 共感の断絶要因

注意を引いた後は、社員の共感を促していきますが、この道を断絶してしまう要因があります。それが「会社・上司への不信感」です。会社としての法令違反、上司のハラスメント、言行不一致などに要注意。

断絶要因を把握するための調査や、問題を解決するためのマネジメント教育など、パーパス浸透への道を着実に登っていける組織の状態に整えていきましょう。

Empathy (共感)

会社から一方的にパーパスを提示しても、真の共感は得られません。そこで「会社のPV(パーパス&コアバリュー)」と「個人のPVにあたるもの(個人の夢や価値観)」との重なりを見つけていくことが必要になります。 ※すぐには見つかりません。時間をかけて見つける、育てていきましょう。

なお、重なりを見つけることができると「この会社で共に働く意味」が醸成されます。会社と従業員個人が、それぞれの夢を叶えられるパートナーとして、強い一体感をもって業務に取り組んでいる姿を目指しましょう。

Action (行動)

共感を醸成しても、抽象的な言葉であるパーパスを具体的な行動に落とすことは容易ではありません。そこで、行動を促す仕組みが必要です。

例えばパーパスに基づいた「理想の人材像の定義」「個人やチームの目標設定の支援」「社内のルール変更」など全方位から攻めていきましょう。

この時に必ず「社員を巻き込んだプロジェクトとして進める(経営陣だけで決めない)」ことが重要。いつまでも受け身では行動は変わりません。

Success (成功)

人の行動を促す(継続させる)には「成功体験」が欠かせません。そこで、パーパスに基づいた「成功体験の醸成」を導いていきましょう。
この時に重要なことは「スモールステップで小さな成功体験を醸成する」ことです。いきなり大きな成果は出ない=いつまでも成功体験が得られないと「頑張って続けよう」というエネルギーが不足し、行動を起こさなくなります。

最初は小さな成功でいいので、個人もチームもどんどん表彰していきましょう。

Share (共有)

マップをよく見てください。「共有」への橋は「成功」だけでなく「行動」からも架かっています。最初は「小さな成功」でさえ難しいことがある、難しいと思う人がいる。そこでパーパスに基づいて「こんな取り組みをした」という「成果の出ていない行動」も「ナイスチャレンジ!!」と取りあげ、社内に共有していきましょう。大きなものから小さなものまで、様々な事例を共有していきましょう。

これによって、多様な人が多様な事例から「あ!それなら私もできそう」という「共感・発想・行動」につながります。

以上、いかがでしたでしょうか。パーパス浸透マップに記載したポイントは「一通りやれば終わり」ではありません。理念浸透とは「やり続けること」。やり続ける、アップデートしながら回し続ける、という意識で取り組んでいきましょう。その結果「社会への独自性の高い価値提供」と「強い一体感」という、かけがえのないものが得られます。