「これから就職・転職する際パーパスをどの程度重視するか?」という質問に対し「36%の人が、かなり重視する」「49%の人が、そこそこ重視する」と回答。つまり85%もの人が「就職・転職する際にパーパスを重視する」という結果がウォンテッドリーの調査からわかりました。(2022年4月の調査)
このウォンテッドリーの調査結果に対して「なぜ?」と疑問を持った方は多いはず。私自身も当時、ここまで多いとは思わなかったので「質問の仕方に問題があったのでは?」と考えたぐらいです。しかし、それから2年が経過し「肌感覚としてもパーパスを重視する人が増えてきた」と感じています。そこで「なぜここまでパーパスを重視するのか?」について考察してみます。
生きる目的は何か?
人間も生物の1つ。無意識に「生きること・種の繁栄」が目的となっているはずです。幸せになりたい、お金持ちになりたい、夢を叶えたい、など様々な目的を持っている人はいますが、あくまでも人間という生き物自体は「生きること・種の繁栄」が目的のはず。では、その目的達成に「パーパスが寄与するのか?」という視点で考えてみると面白そうです。
地球が壊れたら生きていけない
生きることの目的が「生きること・種の繁栄」だとすると、生きることを直接的に阻害する要因は排除することになる。自然を壊す企業、人権を無視する企業、が選ばれなくなるのは当然。しかし、そこまで考えている人は多くないのが現実。目の前の「便利」や「短期的な幸福」に魅了され、大量生産大量消費の歯車になる。
つまり、多くの人間は「人間本来の生きることの目的と反する行動」を取っている。これではパーパスが重視される理由になりません。
カッコよさの新勢力が現れた
2010年前後に、日本では社会起業家ブームが起きます。コーヒー、バック、ジュエリーなど、発展途上国の立場の弱い生産者から搾取するのではなく「公正な取引をした商品」を扱うベンチャー企業が出現。マスメディアにも取り上げられ「カッコよさの新勢力」として広く認知されます。
消費者がこのようなベンチャー企業を選ぶようになると、古くからの大企業も黙っていません。大手の食品メーカーも「フェアトレード認証ラベル」を記載した商品を販売するようになりました。この流れで徐々に人々が変わっていきます。
日本に生まれ、暮らしていると、生活に必要なものは一通り揃っている。つまり「生きること」が保証されたなかで、どう生きるか?が問われていきます。さらに、インターネットの普及によって「世界中の不都合な真実」が明らかになり「善く生きる」ことを選択する人が増えました。
私もその1人ですが、ここで大きな疑問があります。私は明らかにマイノリティ(少数派)。85%もの人がパーパスを重視する、という結果には違和感しかありません。「善く生きる」ことを強く意識している人は、今現在でも少数の筈です。
求めているのは「つながり」かもしれない
スマートフォンの普及で「画面と過ごす時間」が増えました。職場ではハラスメントに怯え「濃いコミュニケーション」が減りました。ダイバーシティ(多様性)の普及で「違うこと」が大切にされるようになりました。その結果、みんなバラバラになりました。人と人との「つながり」が希薄化しました。我々はいま「孤立」しているのです。
人間という生き物は、動物のなかでも圧倒的に運動能力が低い。その代わりに発達したのは脳と社会性です。人間が生きるには「社会性」つまり、人と人との「つながり」が欠かせないのではないでしょうか。
パーパス(社会における存在意義)を企業が掲げ、社会のサステナビリティ(持続可能性)を高めていこう!という現代のこの流れ。ここに求職者が惹きつけられているのは「地球の存続問題」「カッコよさの新勢力」といった近年の積み重ねと「1つの共通理念のもとに “つながりたい” 」という潜在的な欲求があるように思います。
このように考えてみると、パーパスはこの時代に人間が「生きる」ために欠かせない要素なのかもしれません。