パーパスで採用基準を上げろ!

日本では労働人口の減少や円安による影響から「これまでにない採用難の時代」を迎えています。さらにこの先、技術的革新によって言語の壁もなくなれば、益々日本企業は人材採用に苦戦していくことでしょう。

「いまの採用基準じゃ採れない。未経験でもスキル不足でもいい。基準を下げよう」という会社も増えています。しかし「基準を下げたのにエントリーすらない。あっても欲しい人材じゃない」と嘆きの声が響きわたる状況。

このような状況下で苦戦しているA社。なぜ苦戦しているのか?どうやってその状況を打破して「採用で大成功」したのか?ご紹介していきます。

▶ 採用で苦戦する会社

これまでの採用基準は「知識とスキル」を重視。主に求職者の「学歴、知識、経験、スキル、資格」を見て、よりこれらの高い人を採用しようとしていました。数年前まではこれが機能していたのですが、ここ1~2年でエントリーすら乏しい状況に。経営者も採用担当者も頭を抱えています。

業界の変化はどんどん早くなり、以前のようにゆっくり育てている余裕はありません。そこで「即戦力を期待」し、この難局を乗り越えるために「会社に尽くしてほしい」と思っています。

一方で求職者は「自分のスキルに見合った最大限の給与と働きやすさ」を手にしたいと考えます。もっと言うなら「できるだけ楽に働きたい」のです。企業は尽くしてほしい、求職者は楽をしたい。ここに大きなギャップが生まれています。

この状態で、会社には「あなたじゃなきゃダメ」がありません。求職者には「この会社じゃなきゃダメ」がありません。お互いに都合の良い「道具」として扱っているだけの関係です。

それでも業界平均を上回る給与と働きやすさを提供できる会社には人が集まります。ただし、採用した人のパフォーマンスは高くありません。だって「できるだけ楽に働きたい」のですから。

▶ 採用で成功する会社

ではどうやってこの難局を乗り越えたのか。答えは「採用基準を上げた」ことです。これまではあまり重視してこなかった「目的と態度」の重要度を大幅に上げました。これについて詳しく説明していきます。

企業側は求職者に「なぜ働くのか?何を成したいのか?働く目的」を問います。その目的と、自社の理念がどれだけシンクロしているか?を最重要項目としました。

さらにこれまで生きてきた「態度・姿勢」を問います。どのような態度で生活や仕事に向きあい、どのような成果を出してきたのか?または、成果が思うように出ないなかで「変わりたい」という意思が強いかどうかを見ていきます。

仕事の1日8時間を苦役とするのか。それとも自己実現の舞台にするのか。後者を選ぶ人は「会社の理念と自分の夢や生きる目的」との接点を探します。「働きやすさより働きがい」を選びます。

求める知識やスキルはそのまま(実は一部上げた)。そこに「目的と態度」を採用基準に加えました。そして、その採用基準に合わせて採用ページを改修。自社のパーパス、そのための中長期のビジョン(展望)、そこでどんなチャレンジが必要か?どんな人が足りないのか?具体的に記載します。これは「こんなあなたと一緒に働きたい」という明確なメッセージになります。

採用基準を上げたことで「誰でもいい」から「あなたがいい」になりました。その結果、エントリー数が増加。面談・面接のなかでお互いのパーパス、夢、ビジョンなどを語り合い、求職者は「この会社じゃなきゃダメだ!私がこの会社の経営理念を体現させる」という気持ちになります。

A社は「全然採れない。採ってもすぐ辞める(離職率20%)」という状況から「どんどん採れる(採用数3倍)。採ったら定着する(離職率3%)」に激変。これはKSモデル(知識とスキル重視)からPAモデル(目的と態度重視)の採用へ、採用基準を上げたことによる成果です。

採用は結婚と似ています。年収や容姿が気になる人もいますが、「生き方や哲学」で深く共感した相手と一緒になる方が幸せではないでしょうか。お互いの生きる目的・夢を叶えられるのではないでしょうか。

採用難の時代に、知名度もないA社が採用市場で勝てたのは、まぎれもなくパーパスに基づき、パーパスを前面に押し出し、採用基準を上げたことです。みなさまの会社でも、マネしてみてはいかがでしょうか。

※注意事項。パーパスに基づいた事業と組織の変革。これが現在進行形で進められていないと盛大なミスマッチを引き起こします。入社してみたら全然違った!パーパスなんて口だけか!と早期退職に繋がることも。この採用手法を実践する場合は、必ず「パーパスに基づいた事業と組織の変革」を現在進行形でゴリゴリ推し進めてください。

※補足。この方法でどんな人が採れるのか?現職で数年勤務。スキルも経験も積んで一人前に。しかし硬直化した組織で「目の前に課題があるのに解決できない」というストレスがたまる状況。このままこの環境で終わりたくない。外を見れば自分なんてまだまだ。もっと成長したい!チャレンジしたい!世の中のためになる仕事をしたい!という人との相性が良いです。なお、中途だけでなく新卒にも有効です。