パーパス策定の落とし穴

パーパス(社会における存在意義)を定めて会社を経営したい。事業を通して社会課題を解決していきたい。そんな思いをもつ経営者が増えてきた一方で、「パーパスを作ろうとチャレンジしたけど挫折した」という話もよく聞きます。今回はなぜ挫折したのか?どうすれば挫折せずにパーパスを作ることができるのか?を解説していきます。

最初に「挫折しなかった経営者」の話をしましょう。パーパスをうまく作れた経営者は「社会の課題、業界の課題」について日ごろからよく考え、「なんとかならんもんか」とモヤモヤした状態にあります。このモヤモヤがあると、比較的スムーズに「事業を通してこの社会課題を解決したい。そのためにはまずは業界のこの課題を解決してくべきだ」といった具体的なイメージを導き出せます。しかし、目の前の業務に忙殺され、視野が狭まっている経営者にとって「社会の課題、業界の課題」は見えていないことが多い。そこで、その状態を突破するための方法の1つをお伝えします。

■ 自社起点のパーパス探求ワーク

① 自社のできること、できないことを整理してみる。
<できること>

**を作れる。**は得意じゃないけど一応やったことはある(できる)。
<できないこと>
**は難しくて作れない。昔やって失敗した。**は断っている。

こんな形で整理しながら、改めて「自社の価値」を確認していきます。

② 自社は誰の役に立っているか、誰の役に立っていないかを整理してみる。

<自社の役立てること>

**の規模の会社。**な志向のある人。納期を待てる人や会社。
<自社の役立てないこと>

予算の少ない会社。営業エリア外の人や会社。**レベルを要求してくる顧客。

①も見ながら「自社の価値」が深まると共に、「今後、誰の役に立ちたいか?」を考えていくことも促進してくれます。

③ ワクワクすること、しないこと

<ワクワクすること>

(例)新しい取り組み。お客様の成果に直結したとき。**が見れたとき。
<ワクワクしないこと>

(例)単純作業。制限の多い契約。**のない仕事。

①②を見ながら考えることで、③が出てきやすい経営者が多いです。(いきなり③から入ると思考停止に陥ることも)

①②③をホワイトボードなどに書きだしながら整理をした上で、全体を俯瞰して見てみましょう。ここから「社会の課題、業界の課題」を見つけることができるケースもあります。例えば「うちができない**は、他社でもできないか、すごく時間とコストが掛かる。だからお客様は困り果てている。その結果、生産性が低下し、自信を失っている。10年、20年掛かるかもしれないけど、これを解決できたら日本の生産性の低さの解決にもつながるし、すごくワクワクする!」といった形に。

よくよく考えてみると、日本のみならず世界中には社会課題があふれています。生産性の低さ、資源の過剰消費、環境汚染、人口減少(増加)、労働問題、政治、差別、健康、安全など、具体的なものから抽象的なものまでキリがないほどに…。これだけ沢山あると、どのような会社・経営者でも「これまでの歴史・価値観・積み上げてきた価値の先に、ものすごく頑張れば解決できる社会課題はある」のです。

パーパス経営と聞くと「社会課題を起点に、自社のパーパスを定義しよう」と考える方が多いように感じます。私も最初はここから考えますし、間違ってはいない。しかし、実際には「社会課題と自社の間を行き来しながら、自社の社会における存在意義を定義していく」のがリアル。行き来するのだから、最初が「自社起点」からスタートしても大きな問題にはなりません。「自社起点からスタートして、自社と社会課題の間を行き来する」ことを繰り返していけば、素晴らしいパーパスが出来上がります。

一度パーパスを作ってみたけど途中で挫折した。社会の課題を解決したいけど、全然見えてこない。今の事業の先に何ができるのか想像できない。そんな経営者の方は、ぜひ「自社起点のパーパス探求ワーク」を試してみてください。